「認知症は治りません」
その言葉はズシっと僕の心に響きました。「治らないのか…」最初は絶望を感じましたが、本書を読み進めていくうちに先が開けてきました。
「治らないからこそできることがある」
そう思えるようになったのです。(ご存知の通り、「正常圧水頭症」は早期治療で治るといわれています。)
本書を読んでいると、何度も涙が出そうになりました。(実際2回流しました笑)
それはなぜかはっきりわかりませんが、「自分自身がいつか認知症になるんじゃないかという恐さ」と「認知症で苦しんでいる人の気持ちに同情してしまう」からだと感じています。
認知症の最大の危険因子は「加齢」で、「人生百年時代」と言われている日本では、もはや誰もが認知症になる可能性があるといえます。
また、厚生労働省によると、「団塊の世代」が全員75歳以上となる2025年には約700万人、高齢者の実に5人に1人が認知症になると推定されています。
これを読んだ時は衝撃的でした。ただ、「認知症=何もわからない人」という呪縛から解放されたら、そんなに絶望的な状況ではないといえると思います。
認知症で一番多い(全体の約6割)アルツハイマー型認知症の場合、
一般的にまず時間の見当がつかなくなり、次に場所の見当がつかなくなり、最後に人の顔がわからなくなる。
と言われています。ほかにも認知症の代表的なもので、脳血管型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。
もう一つびっくりしたのが、認知症に対するイメージです。認知症というと医療や介護のイメージが強かったんですが、住まいや交通手段、詐欺や消費者被害の防止、金銭管理や財産保護、人権擁護など関わる分野が多岐にわたることに驚きました。
本書では、認知症の定義について、
「成年期以降に、記憶や言語、知覚、思考などに関する脳の機能の低下が起こり、日常生活に支障をきたすようになった状態」
とありました。まずは定義を知ることからだと思います。ここから認知症の本質は「今までの暮らしができなくなること」「暮らしの障害」「生活障害」だといえる、と筆者は語ります。
では支える側、支援者は何ができるのか。
最も重要なのは、周囲が、認知症の人をそのままの状態で受け入れてくれること、だと長谷川さんは強調しました。
僕は映像や経験談を通して、認知症の介護に携わった方の話を何度か聞いたことがあります。そこで「笑顔で介護を楽しんでいる」というフレーズを聞いて何だか心があたたかくなりました。
僕もそんな人になりたいと心から思いましたし、そうできる人を心底から尊敬できますし、大好きです。その”優しさと強さ”に涙が出そうになります。(涙もろすぎですね笑)
介護はこれからの時代、誰もが直面する問題です。
一人で悩まずにそばにいる信頼できる人や専門家に相談してください。
僕も幸運なことに近くに話を聞いてくれるプロフェッショナルがいます。本当に幸せなことですし、僕自身辛い状況にあった時に救われました。やっぱり人は支え合って生きていくんだなと強く感じました。周りの方々には本当に感謝ですね。
本書にあった長谷川氏の印象的だった言葉をいくつか紹介いたします。
「聴く」というのは「待つ」ということ。そして「待つ」というのは、その人に自分 の「時間を差し上げる」ことだと思うのです。
褒めることを忘れないでほしい。
認知症の人と接するときは、笑いを忘れないでいただきたいと思います。
オールドカルチャーとニューカルチャー
The person comes first.
死んで戻ってきた人がいないところを見ると、よさそうな場所に思えるけれど。
じつは過去というのは本当はないのです。過去とは、いま。なぜなら、昔のことを思い出したり、話したりしているのはいまなのだから。
ぜひご一読ください。